誰も得しない日本史

誰も得しません

教科書の改訂と入試のトレンド 第1回

以下、2018年3月25日記事(引っ越し分)
 
教科書の記述は、数年ごとに書き換わっていきます。
そして、書き換わった箇所というものは、研究が進展したところであり、
学者、すなわち入試問題を作成する方々が注目しているところでもあります。
そういった、教科書が書き換えられた箇所は、大学入試でもよく出題されます。
山川出版社の『詳説日本史B』が改訂されてから数年がたっていますが、センター試験がもうすぐ大改革される今、教科書記述の変更点をおさらいしておくことは重要だと思います。
このシリーズでは、現行の『詳説日本史B』が一つ前の版からどのように変わったのかをチェックして、次の改訂に備えることを目的とします。
受験生は、変更箇所のリストをざっと見ておくだけでも、ずいぶんと勉強がしやすくなると思います。
ぜひ、活用してください。
週1~2回投稿して、今年中に完結することを目標にします。

※201910月現在、第8回で止まったままです。なかなか再開のメドがたちません。申し訳ございません。


―― 山川出版社『詳説日本史B』 ――
第1章 日本文化のあけぼの
 第1節 文化の始まり
 
 
当節の変更箇所のリストは、一番下にあります。
その中でも、目立つ箇所は二つです。
①北海道白滝遺跡に関する言及の増加と、
②自然科学的年代測定法に関する言及の増加です。
こうした箇所は、研究者が新しく注目し始めているところや、研究が盛んなところと考えられます。ということは、受験に出題されやすいところだということですね。
①と②を順にみていきましょう。

①白滝遺跡
白滝遺跡は、旧石器時代と縄文時代に登場します。
旧石器時代では、細石器文化の遺跡(+黒曜石の産地)として、
縄文時代では、黒曜石の産地として、です。
場所は、このへんです。
 
この遺跡の調査は1950年代から行われてきました。それが、なぜ今になって教科書でよく取り上げられるようになったのか。
それは、1995~2008年に道路建設工事にともなう大規模な調査が行われたからです。この調査によって研究が飛躍的に進んだから、注目度が高いんです。細石器文化が世界的に注目されているということも、白滝遺跡の注目度アップの背景にあるでしょう。

②自然科学的年代測定法
自然科学的年代法は日々進化しており、それを受けて歴史学では学際的な研究がますます盛んになっています。だから、自然科学的手法に対する注目度は高いのです。
受験生は教科書にある"史料だけでは分からなかったもの”には十分注意しておきましょう。古代ならなんといっても木簡だし、新安沈船や草戸千軒や志苔館なども出題されますですね。
ちなみに、おもしろいのは、異なる学問分野で矛盾する結果が出ているものです。例えば、天智天皇が663年の白村江で敗北した後、唐と新羅の侵攻を恐れて造営した大野城という山城があります。ところが、大野城から出土した木柱を年輪年代法で調査した結果、なんと648年に極めて近い年代に伐採されたという分析結果となりました。
こういった結果がでると、「おいおい、白村江の戦いで負けたから、あわてて建てたんじゃなかったの??」となりますね。すると、この分析結果をどう考えるか、『日本書紀』の記述をどう考えるかといった議論が白熱し始めて、面白くなってくるのです。
そして!!その議論が落ち着いてきて、およその結論が出てきてからようやく教科書に掲載されるのです。。。だから、教科書は面白くな……ゲフンゲフン(咳払い)。な、なんでもないです。

【主な変更箇所】
1. 人類の誕生が「約500万年前」から「およそ650万年前」に。
2. 人類誕生の地質学的時代が「第三紀の鮮新世」から「新第三紀の中新世」に。
3. 間氷期に関する言及を付加。
4. 人類の日本列島渡来回数が「何回かにわたり」から「少なくとも2回」に。
5. 日本列島に渡来した大型動物の例が「北からはマンモスやヘラジカ、南からはナウマンゾウやオオツノジカなど」から「トウヨウゾウやナウマンゾウなど」に。
6. 日本人の形成過程に関する記述が大幅に変化。「(古・新)モンゴロイド(蒙古人種)」を使用しなくなった。「モンゴロイド(蒙古人種)」は「現在のアジア人(アジア系人種)」に。
7. 旧石器時代の年代が修正された。後期旧石器時代は「約3.5万年以降」から「約3万6000年前以降」に。中期は「約3.5~13万年前」から「約3万6000年~13万年前」に。
8. 細石器に付された注に、北海道白滝遺跡に関する言及を付加。
9. 年代法に関する記述が、脚注からコラムに格上げ。記述も詳細に。
10. 縄文時代の終わりが「弥生時代がはじまる紀元前4世紀ころまで」から「弥生時代が始まる約2500年前頃まで」に。
11. 脚注の「あく抜き」が「水にさらしたり、土器で煮たりしてアク抜き」に。
12. 「黒曜石の分布」に関わる地図で、原産地の例示が「信州」「神津島」から「北海道白滝」「長野県和田峠」に。
 
 
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