誰も得しない日本史

誰も得しません

共通テスト難易度考察 H29試行調査01

全体のコンセプト

 

センター試験のときの調査に準じて、共通テストの問題を解くのに必要な知識レベルを調査していきます。

 

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使用するものは、山川出版社の問題集『山川一問一答日本史 第2版』(以下『一問一答』)です。

 

この本には、約4590問の用語問題が収録されています。

問題は3つのレベルに分かれていて、

 

基本用語は約1980問

標準用語は1360問

その他の必要用語は1250問

あります。

 

これらのうち基本用語だけを知っていたら共通テストで何点取れるのかを探っていきます。同様に、標準用語まで知っていたらどうなるのか、その他の必要用語までならどうかといったところまで切り込めれば理想的です。

 

H29試行調査

問題は→大学入試センター(32M)(https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00011243.pdf&n=5-05_%E5%95%8F%E9%A1%8C%E5%86%8A%E5%AD%90_%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8F%B2B.pdf

第1問

生徒による発表資料から、中世までの日本における「会議」や「意思決定」の方法を読みとらせる問題です。

解答番号1

1005年に行われた会議の概要を読んで、〔Ⅰ〕〔Ⅱ〕2つの問題に答えなければなりません。

 

〔Ⅰ〕は会議の議事の進め方を問うもので、選択肢は、

a 地位の低い公卿から意見を述べた

b 最高位の公卿から意見を述べた

です。

 

いきなり、共通テストの試行調査(以下、共通テスト)とセンター試験との違いが見えてきました。試行調査は、単純な知識だけでは解けなさそうです。この問題を解くにあたって、受験生が思考するであろう過程を想像してみましょう。

まず、1005年は摂関期です。西暦の感覚があやふやな人でも、資料の冒頭に藤原道長が登場することから、資料の会議が摂関期のものであることは分かるはずです。

摂関期における公卿の会議については、教科書をよく読んでいる人なら、「陣定」(じんのさだめ)という公卿会議の名前を思い出せるかもしれません。ただ、陣定は山川出版社の『山川一問一答日本史』(以下、『一問一答』)という問題集では「その他の必要用語」に属する、難しめの用語です。

では、難しめの用語まで暗記していないと共通テストは解けないというと、そうではありません。逆です。自分が陣定という知識をもっていたと仮定して、〔Ⅰ〕の選択肢を見なおしてみてください。解けませんよね。そう、「摂関期の公卿会議を陣定という」という難しめの知識を単純に暗記していても解けませんよ、というのが共通テストなのです。

さて、受験生は〔Ⅰ〕の選択肢のどちらが正しいのかという知識はもっていないので、資料から読み取るしかありません。資料には「左大臣の藤原道長、右大臣の藤原顕光、……参議の藤原行成」が「藤原行成から順番に意見を述べていった」とあります。そこで、受験生は藤原行成が地位の低い公卿なのか、それとも最高位の公卿なのかを考えることになるのです。

このときに必要な知識は、左大臣と右大臣と参議の上下関係のみです(あえて言えば、藤原道長という権力者で有名な名前が出ているので、藤原道長さえ知っていれば想像はつく、すなわち藤原道長さえ知っていれば、カンのいい人なら解ける問題です)。『一問一答』には「参議」は出てきませんが、奈良時代における基本用語の問題として、政府の最高機関である太政官が、官職の高い順に太政大臣→左大臣→右大臣→大納言で構成されていることを問う問題があります。この基本用語の知識を駆使すれば、左大臣の上には太政大臣しかいないことが分かるので、参議は左大臣の下のどこかに位置するはずです。よって、理論的に、〔Ⅰ〕は基本用語の知識のみで解答可能ということになります。

以上の解答過程をみるに、〔Ⅰ〕は、本番で紹介された資料をその場で理解したうえで、違う時代の知識までも駆使して解くという能力を、受験生に求めていると考えられます。

〔Ⅰ〕を解くための最短手順は、以下のようになります。

①資料から、参議藤原行成→……→右大臣藤原顕光→左大臣藤原道長の順に意見を述べたことを読み取る。

②左大臣の上には太政大臣しかいないという知識(基本用語レベル)を利用して、選択肢aが正しいことを導き出す。

 

 

〔Ⅱ〕は会議の決定の方法を問うもので、選択肢は、

c 藤原道長が最終決断を行った

d 天皇への参考意見を提供した

です。

 

 この問題を『一問一答』の知識だけで答えるためには、『一問一答』にある陣定の定義を覚えておかなければなりません。その定義は、「摂関期、天皇(もしくは摂関)の決済の参考にされ、国政の重要事項を審議した公卿の会議」です。陣定というその他の必要用語まで暗記していれば、dが正解であることが分かります。

……が、ここで疑問が浮かび上がります。従来のセンター試験では、教科書の知識で導いた選択肢(今回はd)が、資料の内容と矛盾することは絶対にありませんでした。つまり、知識で選択肢を選べた問題では、資料を読む必要はなかったのです。しかし、この大原則が共通テストでも当てはまるのかどうかは、実際に調査してみないと分かりません。

では、資料を確認してみますと、「全員が意見を述べ終わると、行成はその内容を定文という書類にまとめた。藤原道長ら2人が申請を却下せよとの意見、藤原顕光ら8人が申請を許可せよとの意見であると書かれていた。定文は天皇に奏上され、申請の諾否が決められた」とあります。これによると、藤原道長は意見を述べても決定はしておらず、全員の意見が書かれた定文が天皇に提供されて、天皇が承諾もしくは否定したことが分かります。陣定の知識とも矛盾しませんでした。こうして、〔Ⅱ〕の解答はdであることが導き出されます。以上により、理論的に、〔Ⅱ〕は知識を用いなくても解けてしまうということになります。

〔Ⅱ〕を解くための最短チャートは、以下のようになります。

①資料を読んで、藤原道長が決断を行っておらず、天皇に意見を提供したことを読み取る。

 

 こうして、〔Ⅰ〕〔Ⅱ〕を合わせた、解答番号1の答えは、②ということになりました。そして、この問題は、資料さえ読めれば基本用語の知識だけで解けます。この場合、H29のプレテストに配点はないので、1問ゲットという言い方をしておきましょう。

ただし、逆に言えば基本用語の知識をもっていても資料が読めなければ、〔Ⅱ〕が解けません。この場合、解答番号1は選択肢①と②の二者択一になるので期待値は0.5問(ゲット)となります。

また、基本用語の知識すらもっていなくても、〔Ⅱ〕は資料の読み取りだけで解答できるので、この場合も解答番号1の期待値は0.5問(ゲット)となります。

さらに、陣定というその他の必要用語の知識まで習得していたのならば、資料が読めなくても1問(ゲット)できます。

 

【期待値表】

 

資料読める

資料読めず

用語習得せず

0.5

0.25

基本用語習得

1

0.5

標準用語習得

1

0.5

その他の必要用語習得

1

1

※四者択一なので、何も分からなくてもテキトーにマークすれば、四問に一問程度は正解する(=期待値0.25)

 

このような感じで、知識面だけをいえば、『一問一答』のどこまでを習得すれば、共通テストでどのくらいの点数が取れるのかを、これから順次調査していきたいとおもっています。最後まで調査すれば、基本用語の知識だけで獲得できる点数の期待値などが導き出さるというスンポーです。

以下の拙著では、センター試験でも同様の調査をしていますので、これからの調査結果とそちらと比較してみれば、『一問一答』という指標を用いて、センター試験に必要な知識レベルと共通テストに必要な知識レベルがどれだけ変化したのかが明らかになっていくことでしょう。

 

 

 

 

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