誰も得しない日本史

誰も得しません

共通テスト難易度考察 H29試行調査05

H29試行調査の問題文はこちら(32Mと重いです)

大学入試センター

 

このシリーズの基本コンセプトは、こちらをご参照ください。

www.daremotokushinai.com

 

解答番号5

悪問だと思われるので、問題文を引用します。

 

問5 中世までの日本における「会議」や「意思決定」について、A~D班の学習を基に、生徒たちは現在と比較して、次のX・Yのように考えをまとめた。X・Yの正誤の組合せとして正しいものを、下の①~④のうちから一つ選べ。

 

X 現在と同じように、ルールにもとづいて議事が進められた。

Y 現在とは違って、社会の階層によって参加が制限された。

 

公式な解答は①(XもYも正文)なのですが、この解答もしくはこの設問には疑問を感じています。

問題文に「A~D班の学習を基に生徒たちは現在と比較して、次のX・Yのように考えをまとめた」とあるからには、A~D班の生徒の学習が解答の根拠とならなければならないはずです。

この場合、〔解答番号5〕を解くための最短チャートは、次のようになるはずです。

①A~D班の学習報告をもとにXの正誤を検討する。

②A~D班の学習をもとにYの正誤を検討する。

 

まずは②からみていきます。

A班の生徒の仮説に「一部の貴族など限られた人々が国の政治に参画していた」とあります。B班の生徒の仮説に「武士の中でも限られた人々が、評定という形式で会議を開き」とありあります。

C班の生徒の図をみてみると、惣村の寄合には乙名・年寄・沙汰人などの指導者層や惣百姓は参加していても、下人・名子といった隷属農民は参加していないことがわかります。

D班の生徒は、「堺は、有力な町衆である会合衆によって治められている」

以上により、Yは正文であることは認められます。

 

①はどうでしょうか。辞書的には、「議事」とは会議で審議すること、もしくは審議の内容のことです。

A班の生徒の仮説には「会議は、ルールに基づいて運営されていた」とあります。そして、官職の低いものから発言するというルールがありました。生徒の報告から摂関期の会議では「ルールにもとづいて議事が進められた」と言えるでしょう。

B班の生徒が示した資料には、「会議での合意形成の原理・原則がはっきりと打ち出されている」とあります。しかし、審議がルールに基づいて進められていたのかどうかは、これだけでは確定できないはずです。

C班の生徒が示した図には「大事なことは全員参加による審議で判断」とありますが、審議(=議事)がルールに基づいて進められたかどうかは、C班の報告だけでは確定できません。

D班の生徒にしても、「堺は、有力な町衆である会合衆によって治められている」とあるだけです。執政官の資料を参考にしてみても、その資料も執政官の会議の進行方法には触れていません。D班の生徒の報告から「ルールにもとづいて議事が進められた」と言えるとは思えません。

以上のように、生徒の報告を根拠とした場合は、Xが正文であることは確定できないはずです。ところが、最初に述べたように、解答ではXは正文としているのです。この解答は、問題文にあげられた生徒の報告からではなく、受験者の知識や常識から導くしかありません。

そこで、受験者が知識を利用しようとしたとしても、鎌倉時代の評定や室町時代の惣村、そして戦国時代の堺の会合の議事(=審議)がルールに従って進められたか否かなんてところまでは教科書には書いていませんし、生徒が知るはずもありません。

結局、この問題は参考資料から論理的に導かれる結果を捨てて、生徒の「今も会議はルールに従って進行するし、Aで摂関期にはルールに基づいて進行していたのだから、他の時代でも大差ないだろう」という、常識や感覚にもとづいて解くしかないのです。

大学入試センターから公表されている、この問題で「主に問いたい資質・能力」には「複数の歴史的事象を比較して共通性や差異をとらえることができる(諸事象の比較)」とありますが、参考文の資料にない、すなわち根拠のない部分を生徒に勝手に想像させているに過ぎません。そして、その思いつき(Xという仮説)を、他の仮説との比較をとおして、どちらの説がより妥当なのかを検討するという過程も経させていません。それは歴史的思考ではありません。個人的見解では、相当にヒドい問題だと言わざるを得ません。正答率も39.0%と低くなっています。

 

この問題は、資料を読み取る力があれば間違えます。知識レベルも受験生に求められる水準をはるかに超えています。この問題は解けない問題で、期待値は0.25と考えます。

 

【期待値表 解答番号5】

 

資料読める

資料読めず

用語習得せず

0.25

0.25

基本用語習得

0.25

0.25

標準用語習得

0.25

0.25

その他の必要用語習得

0.25

0.25

 

 

【期待値表 累積】

 

資料読める

資料読めず

用語習得せず

2.5

1.25

基本用語習得

3.5

2

標準用語習得

3.5

2

その他の必要用語習得

4.25

2.5

 

 

以下の拙著では、センター試験でも同様の調査をしていますので、これからの調査結果とそちらと比較してみれば、『一問一答』という指標を用いて、センター試験に必要な知識レベルと共通テストに必要な知識レベルがどれだけ変化したのかが明らかになっていくことでしょう。 

 

 

 【お知らせ】

Amazonで電子出版しています
 
 
Youtube版「のぶたの誰も得しない日本史 」